top of page
A2_HT_03-1-2 (1).jpg

Image credit: Francis Giacobetti

勅使河原宏の世界 生誕100周年
SA NI HA さには

Hiroshi Teshigahara: Visionary Worlds | 勅使河原宏の世界 生誕100周年

​​

2027年、勅使河原宏(1927 - 2001)は生誕100年を迎えます。その革新性は、今なお世代を越えて共鳴し続けています。私たちはこの節目の年に向けて『Hiroshi Teshigahara: Visionary Worlds | 勅使河原宏の世界 生誕100周年』を始動し、彼の芸術活動の全体像に光を当て、その現代的意義を再発見することを目指します。

本プロジェクトは、戦後東京における前衛芸術の拠点「草月アートセンター」の精神を受け継いでいます。草月アートセンターは、国内外のアーティストが日本で初めて作品を発表・制作する場ともなった出会いと革新の空間でした。勅使河原宏はそのディレクターとして「誰もが自由に表現し、対話できる場を創造する」ことを理念に掲げ、活動を牽引しました。

この企画の使命は、その理念を未来へとつなぎ、次世代に勅使河原宏の挑戦的な芸術世界への扉を開くことにあります。映画、絵画、いけばな、竹のインスタレーション、陶芸、舞台美術、書など、多岐にわたる表現を通して展開された勅使河原宏の生涯の実験は、芸術と社会、個と集団、自然と人工といった関係性を照らし出しながら、今もなお私たちに問いを投げかけ続けています。

『Hiroshi Teshigahara: Visionary Worlds | 勅使河原宏の世界 生誕100周年』は2027年に向けて、展覧会、映画上映、パフォーマンス、映像インスタレーション、トークイベントなどを通じて、多層的に展開されます。特定のジャンルや時代に彼の活動を閉じ込めるのではなく、連続的で多面的な対話として再発見し、勅使河原宏のビジョンが現代を生きる私たちに何を投げかけているのかを、ともに考える場をつくっていきます。

開幕展 SA NI HA | さには

 

勅使河原宏の生誕100周年を記念し、草月プラザ「天国」という象徴的な空間で開催される本展は、いけばなと陶という二つの領域を起点に、イサム・ノグチの「庭」と対峙する勅使河原宏の造形的思索の軌跡を辿る試みです。イサム・ノグチの石庭と響き合うように配置された陶作品群、そして越前和紙に記された直筆の「書」によって、自然と人工、静と動、素材と精神が交錯する場が立ち上がります。「さには」とは、神を迎えるために清められた庭の意。その語源に呼応するように、本展では、言葉にならない感覚の気配に耳を澄ませながら、勅使河原宏という存在の気配にそっと触れていただければ幸いです。

会期:2025年6月7日(土)~7月6日(日)

開館時間:午前10時00分~午後7時00分(金曜日は午後8時00分まで)
休館日:6月29日(日)

会場:草月会館1階 草月プラザ「天国」

 

勅使河原宏の花器作りは、既成の類型的な花器への反発と「いけばなでは器がウィークポイントだ」というイサム・ノグチの発言に刺激されて始まったともいわれています。いけばなと陶器との関係からいえば、単に花をいけたり挿したりするための花器としてばかりでなく、もっとひろくいけばなの構成要素のひとつとして植物を一体化させようとする試みが具現化したものといえます。

勅使河原宏が家元を継承してしてからの活動は、いけばなー立体造形ー空間ー庭園というように次第に大きなひろがりを持って展開して行きました。最初に手がけた庭園は酒田市にある谷口吉生設計の土門拳記念館の庭でした。同館にはイサム・ノグチの手がけた庭と建築物を挟んで対をなすように勅使河原宏の庭が配置されています。そのほとんど同時期に、越前の草月陶房でも、苔の上に大小さまざまな石を配した庭を作っています。そこでも、いけばなと花器との関係においてそうであった様に、自然の矩を超えながら新しいもうひとつの自然を創造して行くという制作の基本的な姿勢が貫かれています。

宏と福井との出会いは、雑誌『草月』の「環境にいける」という取材のために福井を訪れたことをきっかけに始まり、翌年1973年には越前陶芸村に草月陶房を開設しました。それをきっかけに一年の半分近くを福井の自然と風土にどっぷりと根を下ろした暮らしが始まり、陶芸のみならず様々なものとの出会いをもたらしました。その一つが竹という素材であり、和紙という素材を知ったのも福井に来てからでした。

今回の展示は、1980年11月~12月に草月プラザ「天国」にて開催された「イサム・ノグチ 勅使河原宏 二人展」に出品された宏の陶作品を可能な限り宏本人がレイアウトした場所に設置することで、イサム・ノグチの庭「天国」と対峙する宏の思索の軌跡を辿ってみようとする試みでもあります。加えて、イサム・ノグチの庭「天国」と勅使河原宏の「陶」を繋ぐ一つの要素として越前和紙にしたためられた宏直筆の「書」をコラージュしたバナーが使われます。越前和紙にしたためられた筆跡から溢れ出る宏の息吹きが揺蕩う空間で、イサム・ノグチの、そしてそれと対峙する勅使河原宏の思索から漏れ聞こえてくる囁きに、静かに耳を澄ませて頂けますと幸いです。

展示背景

​勅使河原 宏

草月流の創始者・勅使河原蒼風の長男として1927年、東京に生まれる。
東京芸術大学で油絵を学び、在学中より岡本太郎や安部公房による前衛芸術グループ「世紀」に参加する。その後、表現の場を映画に移し、映画「砂の女」(1964)ではカンヌ映画祭審査員特別賞を受賞。映画制作に加えて、1958年に発足した草月アートセンターのディレクターとしても活躍する。

1980年に第三代家元に就任。その後、国外では韓国・ソウルの国立現代美術館(1989)や、イタリア・ミラノのパラッツオ・レアーレ(1995)、アメリカ・ワシントンのケネディセンター(1996)、 国内では丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(1994)や広島市現代美術館(1997)など、さまざまな場で竹を自在に使った大規模な個展を開催し、いけばなの枠を超えた比類ない芸術として人々に新鮮な感動を与え続けた。また、竹で構成した舞台美術と演出によるオペラ「トゥーランドット」(1992仏・リヨン、1996スイス・ジュネーブ)、創作能「スサノオ」(1994、アビニョン演劇祭)、チャンドラ・レーカ舞踏団の「スローカ」(1999)、創作舞踊野外劇「すさのお異伝」(1999)などを幅広く手掛け、大きな話題となった。

さらに、陶芸や書にも才能を発揮し、ジャンルにとらわれない創作活動を晩年まで展開。90年代からは「連花(れんか)」という、新たな手法による即興創作を提唱し、いけばなの可能性を大きく広げた。2001年死去。

​勅使河原 季里

勅使河原宏の長女として生まれる。

1974年より米コネチカット州に留学。1976年にスクール・オブ・ビジュアル・アーツを卒業し、『流行通信』『ハイファッション』の写真家として芸術活動を開始。1978年ニューヨークで大きな影響力を誇ったパンクバンド「イールドッグ」を結成。1985年草月ニューヨーク支部長に就任。1990年に「65トンプソン」での個展、映画『利休』の上映をはじめ、勅使河原宏の米国での活動をプロデュース。同年ガゴシアン・ギャラリーに勤務。その後、草月北米事務局長を務め、2021年より草月のインターナショナル・ディレクター兼アートプロジェクト・ディレクターに就任。日本の前衛芸術を牽引した「草月アートセンター」など草月の芸術活動にインスパイアされたアーティストとのコラボレーションや企画に携わっている。

一般財団法人 草月会
〒107-8505 東京都港区赤坂7-2-21 草月会館
TEL: 03-3408-1154
E-mail: hiroshicentennial@gmail.com

bottom of page